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N総研研究所の推計では、2005年時点で、金融資産が1億〜5億円の富裕層マーケットの規模は167兆円、同5億円以上の超富裕層マーケットの規模は46兆円、合わせて富裕層・超富裕層マーケットの規模は222兆円である。
また、それぞれの世帯数は、富裕層81・3万世帯、超富裕層5・2万世帯、合わせて86・5万世帯である。 2003年に125兆円であった富裕層マーケットは、2005年に167兆円に増加した。
超富裕層マーケットも同様に大きく増加している。 この二年間で富裕層・超富裕層マーケットが急拡大したのは、主に株価の上昇が原因と考えられる。
富裕層・超富裕層は、リスク性資産(株式、債券、投信など)を多く保有しているため、株価上昇による資産増加のメリットを最大限に享受した。 さらに、2005年以降は、三大都市圏の地価が上昇に転じた。
その結果、都市部において価格が上昇した不動産を売却した富裕層・超富裕層が増加したと見られる。 1995年以降の10年間の傾向を見ると、富裕層・超富裕層が、不動産資産よりも金融資産を中心に資産を持つ傾向が徐々に進んでいる。
たとえば、相続財産(相続税課税対象となる被相続者の資産)に占める金融資産の割合は、年々高まり、2OO5年には38・2%に達している。 この要因としては、長期にわたる地価の下落と、不動産資産より金融資産として財産を保有する傾向が強まっていることの二つが考えられる。
過去には、「日本のお金持ちは、大半の財産を不動産として保有している」といわれたものであるが、不動産資産よりも金融資産として財産を保有する傾向が、結果として強まっている(なお、2005年以降の三大都市圏での地価上昇によって、相続財産に占める不動産の割合が上昇に転じている可能性はある)。 今後、富裕層・超富裕層マーケットが拡大するかどうかは、株価や地価の動向に加えて、相続や退職金による資産の移転、「格差社会」といわれる所得格差の進展、ベンチャー企業などの個人事業主の増加がどの程度進むかに影響される、だろう。

2000年前後から、三大都市圏に新しいタイプの富裕層・超富裕層が出現している。 その要因は、新興市場(J、M、Hなど)の相次ぐ誕生と拡大、株価・地価の上昇、相続の増加の三つである。
第1番目の新興市場の誕生・拡大は、ネットビジネスで起業する新興企業オーナー経営者の(新規株式公開)を促進した。 ネットビジネスは、少ない資本と米国から直輸入したアイディアで立ち上げられるため、空前の起業ブームとなった。
これに合わせて、証券業界をあげてIPOを推進した結果、創業からわずかの期間で、二十代、三十代の経営者が数十億円の資産を得るようになった。 2006年のIPO件数は188件に達しており、その数だけIPO長者が生まれたことになる。
また、新規株式公開した新興企業オーナー経営者だけでなく、その企業の創業メンバーや、公開せずに大企業に事業売却した新興企業オーナー経営者も富裕層・超富裕層の仲間入りをしたと見られる。 2002年から2007年6月までに新規株式公開した企業841社の65・2%が首都圏に本社を置く企業であり、48・8%が首都圏を含む三大都市圏の企業である。
この結果から、新興企業オーナー経営者は首都圏に集中していると考えられる。 彼らは、派手な消費、ものおじしない言動、大胆なM&A戦略などで世間の注目を浴びた。
しかし、個人の資産の大半が自社株である新興企業オーナー経営者のなかには、2006年1月のライブドアショック以降の新興市場の株価の低迷で、個人の資産の大半を失った人もいる。 新興企業オーナー経営者の場合、企業の業績や株価の高低が、ダイレクトに個人資産の増減につながるのである。
第二番目の要因は、株価・地価の上昇である。 日経平均株価は2003年4月28日の7607円を底に2007年9月時点で約2・1倍に上昇した。
また、三大都市圏の地価も上昇している。 6大都市(東京区部、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸)の住宅地の平均地価は2OO5年三月から2007年3月までに9・3%上昇した(財団法人日本不動産研究所「市街地価格指数」より)。
2007年時点で、地価の上昇は地方圏には十分に波及せず、三大都市圏にのみ顕著である。 地価が上がれば、保有する土地を売却して金融資産として運用する富裕層が増える。

株価・地価の上昇は、企業のオーナー経営者だけでなく、ホワイトカラーにまで富裕層の仲間入りの機会をもたらした。 第三番目の要因は、相続の増加である。
戦後に創業した企業のオーナー経営者から、二代目、三代目への事業承継・相続が本格化している。 N総研研究所では、実物資産を含む遺産総額は、2O1O年に年間86兆円、2020年に1O9兆円に達すると予測している。
注目されるのは、地方圏の富裕層・超富裕層から三大都市圏に住む子ども世代への資産の移転である。 子どもが三大都市圏に居住していると、地方圏の親世代が亡くなった後には、資産が三大都市圏に移転する可能性が高い。
その三大都市圏に集中する富裕層・超富裕層ファミリー企業オーナーとプロフェッショナルは都会に集中ここでは、富裕層・超富裕層と考えられる職業を持つ人々の地域分布を比較する。 第1章で述べたように、超富裕層の職業は企業のオーナー経営者が多い。
ところが富裕層の場合、その職業は、企業のオーナー経営者に加えて、医者、プロフェッショナル、公認会計士、税理士、弁護士など自営業、不動産オーナー、給与所得者などに多様化する。 そこで、富裕層・超富裕層と考えられる職業として、上場企業オーナー経営者、非上場企業オーナー経営者、大病院の経営者、開業医、プロフェッショナル、自営業の6つの職業を取り上げ、その地域分布を比較した。
これらの職業の地域分布の偏りは顕著である。 もっとも極端なのは上場企業オーナー経営者である。

2007年時点で全国に1957人いると見られる上場企業オーナー経営者の56%が首都圏に集中し、八O%が首都圏を含む三大都市圏に集中している(ただし、上場企業の本社所在地をカウントしているため、実際のオーナー経営者の居住地とは異なる)。 それ以外でも、三大都市圏の一般世帯数シェア(全国の48%)以上に偏っている職業は、プロフェッショナル(同58%)、非上場企業オーナー経営者(同49%)である。
また、非上場企業オーナー経営者は、従業員数1O人以上で連続増収の非上場企業に限定すれば、三大都市圏に51%が集中している。 逆に、地方圏で一般世帯数シェア(全国の52%)以上に偏って存在する職業は、大病院の経営者(65%)と自首業(56%)である。
これらの結果からわかることは、三大都市圏には企業のオーナー経営者とプロフェッショナルが、地方聞には大病院の経営者と自営業が多いということである。 次に、2003年から2005年までの高額納税者名簿に掲載された人の地域分布を見ると、納税額が大きい階層ほど三大都市圏に集中し、納税額1億円以上では八三%が三大都市圏に居住している。
高額納税者の三大都市圏への集中度は、非上場企業オーナー経営者やプロフェッショナルの集中度よりも顕著である。

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